「オレ、天使。」 ■ストレス@ 昼下がりの喫茶店。1番奥の席で向き合って座る2人。 彼氏「・・・でさぁ、お前オレと別れてくんない?」    チラっと竹口を見てから、すぐ下を向いて少しダルそうにしながら話す。 手はカップに入れたスプーンを回している。 竹口「・・・は?!なんでそうなんの?」    わけわかんないって感じで。少し動揺。でも顔は半笑い。視線は彼氏を見たまま。 彼氏「だってホラ、お前なら1人でもやってけそうぢゃん。強いし?」    軽く笑いながら言う。    そこにちょうど彼氏の携帯にメールが届く。    竹口を気にしながらもタイミングいい〜って感じで携帯を開く。 新しい彼女からのメール。 竹口「ねぇ、今あたしたち大事な話してるんぢゃないの?」    彼氏の行動に少しイラつきながら言う。    彼氏は携帯を閉じて、竹口に開き直った感じで説明するように話す。 彼氏「大事な話。そぉだね・・ぢゃあハッキリ言っちゃうと    新しい彼女ができました!ごめんなさい!」 ■ストレスA    さっきと同じ喫茶店の同じ席。向き合って座る2人。 友達「えー・・それで何も言えずに別れてきちゃったの?!    え?つぅかさぁ、アカネはそれでいいわけぇ??1発殴ってくればよかったのに」    友達はストローでグラスの氷をいぢりながら話す。 少し間をあけて、明るく話し出す。 竹口「ホントだよね〜、失敗したぁ〜    今から1発殴らせろって言って呼び出しちゃおっかなぁ〜」    友達の携帯にメールが届く。友達はメールを読みながら話す。 友達「笑。いいね〜    てかアカネ思ったより元気ぢゃん。安心したわ。    ぢゃあ・・ゴメン。あたし、そろそろ行くね。バイバイ」   竹口を気にしながらも笑顔で席を立つ。 ■ストレスB   まだ同じ喫茶店にいる竹口。同じ席に1人でボンヤリしながら座っている。   携帯に母親から電話がかかってくる。 親  「アカネ、あんた、いつコッチ帰ってくるのよぉ」 アカネ「わかんない」 親  「わかんないって、そうやって夏休みも帰ってこなかったでしょぉ」 アカネ「んー・・・」 親  「んーって、なんか元気ないねぇ。ちゃんとゴハン食べてるの?」 アカネ「・・・・・・(じ)」    「実は」と言いかけて、母親にさえぎられる。 親  「まぁ、アカネなら1晩寝たら元気になるわ。あんたは小さい頃からそぉよ。     ぢゃあね、帰ってくるときは連絡しなさいよ?」 アカネ「・・・んー」   携帯を閉じて、ため息。 ■天使あらわる。   夕方、どっかの屋上でたたずむ竹口。   今日1日に起こった出来事がぐるぐる頭ん中で回っている。   いきなりキレて叫ぶ。 竹口「あたしのコト、みんな何もわかってない!!    ・・・・・・・・って、夕日に叫んぢゃったよ。あたし。」   力なく、ため息まじりに軽く笑う。 天使「なら、キミの幸せは皆に自分をわかってもらうコトだね?」   竹口が振り向くと、タバコを吸いながら少し離れたところに男が立っていた。   身の危険を感じた竹口は、急いでその場を離れようとする。   男の横を通り過ぎようとしたとき、男に腕をつかまれて引き止められる。 天使「オレ、天使」   吸っていたタバコを足で消しながら、竹口の腕を掴んだまま言った。 竹口「・・・・・はぁ?!!」   必死に腕を振り解こうと抵抗するが、そのうち疲れておとなしくなる。   おとなしくなったのを確認して、天使は話し始める。 天使「まぁ、そんな悪い話ではないから聞きなよ。」 ■翌日。   コンビニで買い物中。ふと、昨日のことを思い出す。 竹口「・・・・てか、天使って」   レジでお金を払おうとした時、店員が話しかけてくる。 店員「ケケロ、またコンビニ弁当?ちゃんと自炊しなきゃダメだよ〜」   竹口は、なんでそれをって感じで店員の顔を見る。 店員「わかってるよ。 竹口アカネ。苗字をカタカナに分解してケケロ。小学校のときに呼ばれてたでしょ?    あとさ、彼氏に振られたからって落ち込んでちゃダメだよ〜」   後ろに並んでいた客も話かけてくる。 客 「わかってるよ。カップラーメンにお湯いれるとき、線の少し上まで入れて    薄味にして食べるの好きだよね」   知らない2人の顔を見ながら、急いでコンビニの外に出る。   出たところで人にぶつかって買ったものを落とす。   ぶつかった人と落としたものを拾っていると、また話しかけられる。 通行人「大丈夫ですか?顔色よくないですけど・・・」   竹口は少し安心したように答える。 竹口「・・大丈夫です。すいません」 通行人「わかってますよ。昨日、あんなに遅くまで起きてるから元気ないんですよ。     まぁ、昨日あんなことがあれば、よく眠れない気持ちもわかりますけど     アナタは寝ないと元気でない人なんだから、ちゃんと寝ないと体調崩しますよ?」 竹口「ぁぁぁぁぁ・・・・・・」   声にならない声で叫びながら、その場を走り去る竹口。 ■あの日の屋上にて。   夕方、屋上に2人で並んで座っている。 竹口「要は、その手帳に書いてある名前順に 天使3人が交代制でその人たちんトコ回って幸せにしてて・・    今回が、あたしの番て言いたいの?」   竹口は天使の持っている手帳をチラっと見て、すぐ視線を遠くにやる。 天使「そぉゆうコト。飲み込み早いね。ケケロは」 竹口「なんでソレ知ってんの?!」   タバコに火をつけてから話す。 天使「・・天使だから?    それよりさ、オレはキミがさっき叫んでた自分をわかってほしいってやつを 叶えるけどイイ?それで幸せ? あ。でも願い事のチェンジは叶える前限定で2回までできるけど、どうする?」   真剣に話を聞き入っていたが、われに返える。 竹口「そ・・それでいいですっ それで気が済むなら勝手にやっちゃってくれていいですからっ    あたしもう行きますね」   そう言いながら、屋上から走り去る竹口。   竹口を見送って、独り言。 天使「勝手にって言われてもなぁ・・失敗すると神様うるさいんですけど・・・ ま。いっか」   吸っていたタバコを足で消す。 ■屋上にて。 天使2「お前、またやっちゃったべ」 天使1が振り向くと、落ちていたタバコを拾った男が立っている。 天使1「だって、ケケロはそれでいいって言ったもんよ。     ・・え。ぢゃあさ、オレまた進級できない??」 天使3「かもね」 ずれたメガネを直しながら、天使1の隣に天使3が来た。 天使1「・・自分ぢゃない他の誰かに理解を求めること自体が不毛なコトなんだよ。     キレイ事ぢゃないんだよね。世の中。」 ■再びあの日の屋上にて。    夕方、屋上に1人でたたずむ竹口。    しばらく夕日をみつめたあと、いきなり叫ぶ。 竹口「あたしのコト、みんな何もわかってない!! ・・・・・・・って、夕日に叫んぢゃったよ。あたし。」    少しスッキリしたような顔をして、屋上から去っていく竹口。    竹口が立っていたあたりには、消されたばかりのタバコが落ちていた。 終